Case Study & Interview
物件探しが最大の難関
条件を満たす希少な物件を見つけてもらった
T-FRONTE消化器内科・外科クリニック杉浦 功一 院長
開業の背景
当院は、消化器、内科、外科を診療科目とするクリニックです。
勤務医だったころに消化器の内科と外科を担当してきた経験を生かして、内科と外科の両方の視点を持って内視鏡の検査と治療を行っている点が当院の特徴です。
私はもともと外科出身ですが、年々、消化器内科の診察に重点を置きたいという気持ちが強くなっていました。医師としての関心が手術から内視鏡治療にシフトする中、前職の職場環境が大きく変わったため、今が開業を決意するベストなタイミングだろうと判断したのです。
開業準備に関しては、当時から付き合いがある医療機器メーカーと相談しながら進めました。その中でメディットとのつながりも生まれ、各方面から専門分野の情報や知見を教えてもらいながら開業準備を進めました。
物件探しの条件
開業準備で難航したのは物件探しです。というのも、鎮静剤を使う内視鏡治療はリカバリールームが必要となるため、その条件に合う広めの物件がなかなか見つからなかったのです。
物件探しを手伝ってくれたメディットは、その点が大変だったと思います。
現在のクリニックは、クリニックが2つ入るくらいの広さがあります。
欲をいえばあと10平米ほど狭くても良いのですが、そこにこだわっていたとしたらおそらく今も良い物件が見つからず、開業できていなかったと思います。
想定より広く、その分が家賃に反映されるのは難点なのですが、この物件には、それをカバーするメリットもありました。
まずは駅からのアクセスの良さです。物件探しの条件として駅近とは伝えていましたが、駅から1分という立地は素晴らしいと感じます。
また、当院はショッピングセンターの3Fにあり、3Fが医療モールになっています。
当初はモールへのこだわりはなく、単独のクリニックでも問題ないと思っていましたが、患者さんの立場から見ると、買い物のニーズなどと両立できれば利便性が高くなります。
開業してからわかったこととして、最寄駅の利用者のみならず、近隣から自転車や車で来院、通院する患者さんも多いため、駐輪場、駐車場があることも患者さんの利便性を高めるポイントになりました。
物件決定後から開業までの流れ
場所が決まってからは、開業に向けた準備も急ピッチで進みました。
内装はこだわりたいと思っていましたので、妻からアイデアや意見をもらいつつ、メディットに紹介してもらった内装業者と細かく相談を重ねました。
重視したのは、若い患者さんに居心地よく感じてもらう環境づくりです。
勤務医だった時は外科治療があったため、高齢の患者さんが中心でした。入院患者さんに絞れば平均年齢が80歳を超えることもありました。
一方、現在の患者さんは、エリア的に若い人が多いことやインターネット検索で来院する人が多いことなどもあり、40代以下の人がほとんどです。
そのような患者さんたちのニーズを考え、キッズルームを作ったり、リカバリールームを個室にするといった工夫をしました。
初回に1人で来院した女性の患者さんから、次は子供を連れてきていいですかと聞かれることがあります。子供連れで来ることに不安や遠慮を感じている人が多いのだなと感じました。
クリニックを周知する広告に関しては、ウェブサイトを作り、ネット予約の仕組みを導入し、開業前にチラシを作りました。ただ、立地が良いこともあり、それ以外のことは行っていません。
ネット予約を導入したのは、若い患者さんが増えると予想していたためです。ウェブサイトでも若い人が見ていると想定して、機能性疾患についての説明や、個室で安心して内視鏡治療を受けられることなどを伝えています。
また、若い人は新聞よりインターネットを見ます。そのため、チラシも新聞に折り込む量は抑えて、近隣エリアへのポスティングを中心に行いました。
開業から1、2ヶ月はチラシを見て来院する患者さんが中心でしたが、4ヶ月くらい経ったころからウェブサイト経由の患者さんが増え、今は口コミとウェブサイトの患者さんがほとんどです。
機器類は、前職のころから使ってきた経験を踏まえて、良い機器を入れたいと考えていました。とくに内視鏡はメーカーと相談し、最良のものを導入しました。
金額的に見ると、内視鏡だけで内装工事の半分くらいの金額になりましたので、高額な投資だと感じます。しかし、開業を決めたきっかけが内視鏡治療に力を入れることでしたし、そこがクリニックの強みにもなっています。実際、内視鏡で検索して来院する患者さんも多く、妥協せずに選んで正解だったと思います。
クリニックの使命と今後の展望
若い患者さんが多い当院は、彼らをがんにさせないことが使命なのだと思っています。
外科の役目ががん治療であるのに対して、内科の役目はがんの予防です。
外科に仕事を回さず、外科の仕事を奪うくらいの意気込みを持って、患者さんたちの健康を守りたいと思っています。患者さんにとっても、がんになってから治療するより予防に力を入れた方が負担が小さくなります。
私は前職のときに地方の病院に勤務しました。
地方は農家や自営業の人が多く、検診の受診率が非常に低いという特徴があります。胃がんの検診受診率が10%程度で止まっている地域もありました。
そのような環境が原因となり、がんの発見が遅れ、進行してしまうのです。
一方、クリニックがある都市部は会社勤めの人が多く、会社の健康診断によって異常を発見できます。そのような機会を無駄にせず、予防に役立ててほしいと思っています。
検診がきっかけとなって来院した患者さんを見ると、ピロリ菌が原因になっている人などもいますが、忙しさやストレスフルな環境で機能性疾患が起きている人も多いと感じます。
そういう人に適切な処置をするのがクリニックの役目だと思いますし、そのために、ちょっとした不調を感じた時に気軽に行ける環境と整えたり、負担なく内視鏡検査が受けられることをより多くの人に知ってもらうことが大事です。
また、鎮静剤を使う内視鏡治療は病気の早期発見や予防に有効なのですが、鎮静剤がきくまでの時間は患者さんによって違い、時間がかかる場合は他の患者さんの待ち時間が長くなるといった影響が出ます。
そのような点を解消していくことも含めて、今後はスタッフや医師を増やすことも考えています。
例えば、スタッフは現在、事務スタッフ2名、看護師2名で運営していますが、今後は休診日を1日減らしたいと考えています。そのタイミングに向けて1名ずつ増員したいと思っています。
医師の増員に関しては、前述の通り、今のクリニックは十分な広さを確保できていますので、内装と間取りを少し変えれば、その時々の体制に合うクリニックに作り変えることができます。
そう考えると、広い物件を確保できたことにより、将来的な展望が広がり、自由度が増しました。
物件を見つけてくれたメディットに感謝していますし、拡充の計画が現実的になった時には、また相談しようと思っています。