06開業医の年収
勤務医として何年も実績を重ねるうちに、「自分が理想とする治療を思い通りに行いたい」「もっと収入を増やしたい」と考えるドクターは多くいます。なかには開業を検討し始める方もいるでしょう。ここでは開業医の平均年収について、診療科や開業する場所ごとに解説します。これから開業予定のドクターはぜひ参考にしてください。
開業医とは
病院や大学、企業などに雇用されている勤務医に対し、個人で病院やクリニック経営をするドクターが開業医です。一般的には、地域住民を主な患者とするクリニックを起業するドクターが多いでしょう。
開業医には内科から外科、その他の診療科までその専門分野において幅広い初期治療に対応できることが求められます。また、患者やスタッフとのコミュニケーションも非常に重要です。院長の人柄が経営成功の可否を左右する場合もあります。
開業医と勤務医の違いとは
自分で病院・クリニックを経営するかどうかが開業医と勤務医の違いです。勤務医は病院や製薬会社、企業、学校などに雇用されて働きます。勤務医は給与所得者のため、治療した患者数や病院の経営状況に左右されることなく、安定した収入を得られることがメリットです。
ただし、平均収入において、開業医の方が勤務医よりも多い傾向があります。2023年に厚生労働省が実施した「医療経済実態調査報告」では病院勤務医の平均年収は1,461万円です。一方、開業医の平均年収は2,631万円となっています。すなわち、開業医の年収は勤務医の約1.8倍になります。
*参考:「第24回医療経済実態調査」厚生労働省
開業医の平均年収
一般的に、勤務医は薄給だといわれています。それに対して、開業医は高収入を得られるというイメージを持つ方も多いかもしれません。実際の開業医の年収は経営状態に加えて、診療科や患者数によって変動します。年収が上がるに伴って社会保険料や税金として引かれる金額も増加しますが、手取り金額は年収に比例して増えていきます。
個人で病院やクリニックを経営する開業医の平均年収は上述の通り2023年時点では2,631万円と発表されていますが、この金額は売上から経費を差し引いた収支差額となります。開業医の場合、売上から治療や経営にかかるコストを負担することになるため、勤務医の給与とは内容や性質が異なります。実際にどのくらいの経費が発生するかについても吟味しましょう。
開業医のメリット
開業医のメリットは、経営が順調であれば収入が大きく増える可能性があることです。場合によっては勤務医時代よりも労働時間は減り、収入は増えることもあります。自分の方針に従う人材を採用できるため、院内の人間関係に悩まされることも少ないでしょう。
さらに、勤務先のルールに束縛されず、自分が理想とする治療ができることも開業医の魅力です。治療方針や治療費から診療日や診療時間まで、すべてを自分の考えに基づいて決定できます。
開業医のデメリット
開業医は医療行為だけでなく経営にも携わるため、勤務医よりも業務の種類と量が増える場合があります。銀行との折衝やスタッフ管理などに時間と労力を取られて、治療に専念しにくいといったケースもあるのです。
また、予想に反して患者数が増えず経営がうまくいかない場合は、開業時の借金返済や運転資金調達で大変な思いをするかもしれません。さらに、万が一、医療事故などが発生した場合は、経営者として責任を問われることになるでしょう。
科別にみる開業医の年収
開業医の平均年収については、どのような診療科を設けるかによって差が出る場合も少なくありません。そこで、ここでは、診療科別に開業医の平均年収に注目して、その背景についても紹介します。特に、個人開業する場合に、診療科として選ばれるケースが多い内科や眼科、皮膚科の例をみていきます。
内科の年収
内科は日本において患者数が非常に多い診療科のため、一般的には病院やクリニック、内科医の数が足りない地域が多いといわれています。ですから、開業すれば患者を獲得しやすい診療科です。問題は、病院・クリニックの規模やドクター・スタッフの人数によって、1日に対応できる患者数が限られてしまう点です。
クリニックの患者数は1日あたり40人程度が平均とされています。その場合、内科外来の平均的な月間売上は527万円程度、年間売上は6,324万円程度です。また、経費として1年あたり約3,980万円かかります。よって、内科クリニック開業医の平均年収は約2,340万円と考えてよいでしょう。
また、1日の患者数が30人の場合、売上は4,800万円程度です。あるいは、1日に50人の患者を診察すれば約8,000万円の売上を見込めます。
眼科の年収
眼科を受診する患者数は時代が進むにつれて増加傾向にあります。というのも、子どもの頃からスマートフォンやパソコンを使用して目を酷使する人や高齢者人口の増加により、視力や目に関するトラブルも増えているためです。
さらに、糖尿病に代表される生活習慣病によって弱視や失明に至る人が増えていたり、眼鏡やコンタクトレンズ使用者の増加に比例して、眼科医が必要とされるケースも増加しています。
眼科を開業したドクターの年収は約1,500万円から約5,000万円までと非常に差が大きいことが特徴です。病院・クリニックの立地や設備、手術の有無などによって違いますが、平均すれば約3,200万円といわれています。ただし、設備にかかるコストも大きいため、実際の収益については他の診療科より多いとは必ずしも言い切れません。
※参考:外来医療(その1)厚生労働省
皮膚科の年収
皮膚科開業医の年収は患者数や治療費によって異なりますが、約2,600万円が平均といわれています。また、皮膚科の診療単価は平均約3,800円、平均患者数は1日につき56人というデータがあるため、3,800円×56×診察日という計算から年間売上を求められます。土日祝日のみ休診する場合、診察日数は約244日のため、年間売上は約5,192万と計算できます。そこから経費を差し引いた金額が皮膚科開業医の年収となります。
皮膚科開業医の平均的な年収を得るためには、1日あたりの患者数を60人前後、獲得する必要があるといえるでしょう。それだけの患者を集患するには、クリニックの立地選びも大切です。また、患者数に対応できる設備や人手も準備しなければなりません。
地方の開業医について
同じ開業医といっても首都圏と地方とではライバルとなる他院の数や集患数などが異なります。一般的に、首都圏よりも地方のほうがドクターの数が足りず、限られた病院やクリニックに患者が集中する傾向があります。年収にもそういった違いが反映されています。ここでは、地方で開業するケースに焦点をあてて紹介します。
地方の開業医と首都圏の開業医の違い
地方で開業するメリットは、集患しやすいことです。首都圏は大病院やクリニックがたくさんあります。それに対して、地方は病院やクリニックの数が少ないため、患者は選択の余地があまりなく、通院できる病院を選択することが多いです。ドクターの社会的ステイタスや患者からの信頼度も首都圏より地方のほうが高い傾向があります。
地方の開業医の年収
一般的に、開業医の年収は首都圏よりも地方が高い傾向にあります。地方で開業したドクターの平均年収は約3,385万円です。開業医全体の平均年収が約2,748万円であることと比較すると、1千万円以上差が付いています。病院やクリニックの絶対数が不足している郊外や過疎地域では、ドクターに対する住民のニーズが高いため、効率的に集患できます。そのため、地方の開業医のほうが年収が高くなる傾向があるのです。
まとめ
開業医は勤務医と比較すると平均年収が高い傾向にあります。しかし、診療と並行して経営やスタッフ管理といった業務にも時間や労力を割かなければならないため、ドクターの負担が増えるケースが多いのが実情です。
1人ですべてをこなすことが大変な場合は、開業支援サービスをうまく利用することも検討すると良いでしょう。JA三井リースのメディットでは豊富な開業支援実績があります。首都圏・近畿圏で開業について相談したいドクターはぜひ気軽にお問い合わせてください。