04開業までの全体
スケジュール
クリニックを開業する場合、事前に押さえておきたいのが、開業までのおおまかなスケジュールです。ここでは、クリニックを開業するまでのスケジュールについて、どのように組み立てるべきか、また開業形態によるそれぞれのメリット・デメリットについて説明します。ぜひ、開業する際の参考にしてください。
01開業の動機を考える
まずは経営方針や診療内容など、開業の動機と目的をきちんと掘り下げることが重要です。
開業までのスケジュール感
開業は物件選びや内装、医療機器の準備、スタッフの手配、各種手続きなど、さまざまな方面で準備をしていかなければなりません。
そのため多くの場合、1年以上前から準備を始めます。
一般的には年度が変わる4~5月に開業することが多いですが、希望の物件が見つからないこともあります。そのため、特定の時期ではなく物件が見つかったタイミングで開業時期を決めるケースも増えていますので、ご自身が時期を優先するのか、納得のいく物件探しを優先するかを判断するためにも、しっかりとした理念を持ち合わせることが大事になります。
開業の動機を考え、掘り下げていく
開業の動機と目的を掘り下げていくことは、開業における土台を作り上げることでもあります。
なぜ開業したいのか、どのような患者さんにどういった医療を提供したいのか、診療方針や経営方針を具体的に設定しましょう。診療の内容によって、対象となる患者層は変わります。
対象となる層ごとに、物件選びの基準や広告の打ち出し方なども考えなくてはなりません。
掘り下げていく中で、たとえば、「対象患者を一日に何人診察したいのか」といった具体的な運営方針も決めます。また、「収入はどのくらい必要なのか」といった、生活面でのことも考えておかなくてはなりません。
02開業地を選ぶ
地域特性や競合クリニックの数、自身のライフスタイルなどに合わせて開業物件の形態や開業地を選定することが重要です。
開業物件の形態を決定する
戸建て、ビル診療、モールなど、開業物件の形態を決定します。地域によって特性があるので注意しましょう。たとえば、郊外の場合は希望エリアにテナント物件がないこともあり、駐車場を備えた戸建ての開業が多くなります。一方、都心部では交通の利便性の高さから、ビルやモール内の開業が多くなります。
希望するエリアを決める
エリアの選定は、診療方針に沿って決めましょう。対象の患者層が多く、地域に専門のクリニックが少ないところが狙い目です。また、利便性を重視して、自宅近くにクリニックを構えるのも一つの手です。
不動産会社や専門会社に依頼して物件を探す
自分で希望の物件を探すのは、よほどのコネクションがない限り難しいでしょう。開業支援サービスによる紹介や、地域に密着した不動産会社に依頼して、希望に沿った物件を探しましょう。
紹介された物件を検討する
紹介された物件をさまざまな観点から総合的に判断していきます。まずエリアの総人口や年齢構成が対象とする患者とマッチしているか確認します。その際は、10~20年後も見据えたうえで周辺環境を調査し、一日の来院患者数の予測を立てることが重要です。
エリア内の人の動きや交通の利便性も調べましょう。実際に足を運んでチェックしましょう。さらには、エリア内の競合となるクリニックの数や実態なども確認し、慎重に検討しましょう。
03開業のための資金調達をする
開業には当然お金が必要です。ここでは、資金を調達するために何が必要なのか説明します。
開業資金の目安
大体の目安として開業するには5,000万円~1億円ほどかかるといわれています。とはいえ、近年は内装工事費用が上がっており一概にいうことはできません。また、運転資金も多めに用意する方がよく、開業に必要な資金は増加傾向にあります。
金融機関へ融資を依頼する
金融機関から融資を受けるには、事業計画書を作成したうえで融資の相談をし、審査に通る必要があります。融資は、政府系金融機関はもちろんメガバンクや地方銀行などさまざまなところが行っています。
融資を受けるために必要な
「事業計画書」を作成する
事業計画書とは、運営方針のほか、資金の調達方法、使い途、開業した後の収支の見積などを記載した書類です。金融機関は、事業計画書を検討して融資するかどうかを判断します。コンサルタントや税理士など、専門家に作成を依頼するのが一般的ですが、開業動機や診療方針などの理念はご自身で作成するようにしましょう。最近の金融機関はドクター自身の経営者としての資質を重要視する傾向にあります。
04クリニックの内装工事
物件が決まると、すぐに内装工事に取り掛かります。内装レイアウトは工事期間を考慮し開業4ヶ月前までに確定しておくのが良いでしょう。
内装工事を業者に発注する
作成した診療方針に従い、対象の患者層を考慮したうえで内装レイアウトを決めていきます。設計コンペを行い、複数の業者から相見積もりをとることでコストを抑えることも可能です。
業者が実際に施工したクリニックなどがあれば見学させてもらいましょう。実際に現場を見ることで、自身のクリニックに何が必要で何が不要かがわかります。コストとの兼ね合いを意識しながら取捨選択することができます。
05医療機器の選定
物件決定後、内装工事の発注と同タイミングで医療機器の選定に取り掛かります。医療機器の選定は納期を考慮し3ヶ月前までに確定しておくのが良いでしょう。
医療機器を選定する
専門科目によってそろえるべき機器は違いますが、新規にクリニックを開業する場合、どの科でも電子カルテは必須です。
また、医療機器は高額でありながら一定期間で更新されるものも多いため、リースが基本です。特に5~6年で更新するような機器はリースが多くなります。しかし、使用する年数によってはリースのほかに、融資または割賦で購入することもあります。資金調達可能額によってリースと購入を使い分けると、資金計画がうまくいくでしょう。
06スタッフの採用
受付事務や看護師、理学療法士など、診療科によって必要なスタッフを採用します。スタッフ募集については求人サイトや求人誌を利用します。募集時期は開業の3ヶ月前くらいから始めるのが早過ぎず遅過ぎず良いでしょう。
開業前に勤務していた医療機関から、経験豊富なスタッフをスカウトしてくるのも手です。特に看護師は慢性的な人手不足です。経験豊富なスタッフが常駐してくれれば、人材確保や育成の面でも安心です。
07開業するための行政手続き
保健所に「診療所開設届」を、厚生局に「保険医療機関指定申請」を提出するなど各種手続きが必要です。保健所毎に細かいルールを決めていることもあるため、必ずテナント契約の前かあるいは、内装の仕様が固まった段階で保健所へ相談に行きましょう。
08広告を打つ
スケジュールの最終段階として、広告を打つなど集客のための準備をします。広告の方法はクリニックや構える地域性によってさまざまです。たとえば、集客の一つとして口コミが考えられます。これは地域に関係なく、どのような場所でも広がっていく集客方法です。ただし、口コミは結果が伴うまでに時間を要します。そこで、効果の早いHPやポスティング、看板などを検討します。地域の行事や自治会の会合などに積極的に参加して、地道に認知度を高める方法もあります。
ただし、医療機関に関する広告は、法律によって細かいルールや規制があります。厚生労働省の医療広告ガイドラインなどを確認しながら作成する必要があるでしょう。